「SsL」ホール公演の主題とは何か

(2015/6/16 初稿)

(2015/7/4 タイトル修正)

〈注意〉

本投稿は、『田村ゆかり LOVE LIVE 2015 Spring *Sunny side Lily』の
セットリストや映像等のネタバレを含みます。

また、 少なくとも一度はホール公演へ参加されている方を対象として
文章構成をしているため、 代々木第一体育館が初参加となる方には、
意味が伝わりにくい内容となっています。

最後に、こちらはあくまでも個人的な拡大解釈(自己満足)であり、
他の解釈の方に対する論駁でないこと、
他の解釈を認めないという意思表示ではないことをご留意下さい。

上記点をご納得頂いた上で、閲覧願います。

 

 

〈とても長い前置き〉

花冷えの折かと思えば、新緑に薫る風が肌を突き抜け、
気づけば梅雨の6月。
松戸公演にて端緒を開いた、『田村ゆかり LOVE LIVE 2015 Spring Sunny side Lily』が
先日、新潟での最後のホール公演を終えた。

田村ゆかりさんと何度も会えるのが、
とても楽しく最上の週末を過ごしてきたが、
周りの方の感想等を拝見したところ、内容の多くを占めたのが、
過去の催しとのギャップに対する困惑だった。

特に、映像のみでは明確な結論を提示せずに幕を閉じる演出には
投げっぱなしにされた、と考えてしまう方もいらっしゃるようだ。

そこで、身近な人へ多少なりの考えの一助となれば、との思いと
このライブツアーを精一杯楽しんだ証左として
ホール公演を通しての私なりの解釈を整理してみようと考え、
筆を執った。

 

 

 

〈本論〉

今回のライブテーマは、「本当のわたしを見つめて」である。
(『エキセントリック・ラヴァー』より引用)
私が上記拡大解釈に至ったのは、下記根拠に因る。

1 前回ライブLiMからの連続性
2 前回ツアーFFCとの関連性
3 「SsL」の映像と曲目

 

〈1 前回ライブLiMからの連続性〉

今回のライブは、以下の点から
前回のライブを引き継いでいることが分かる。

①事前のインタビュー等での発言
②映像の登場人物が「LiM」と同様であること
③「LiM」の最後の曲と「SsL」 の最初の曲が同じ曲であること

①②については、自明であるので割愛するが
③については、私見を述べておきたい。

「LiM」の主題は、映像で表現されたとおり「想いを伝える」であった。
だが、メディアでの田村ゆかりさんの発言にもあったが、
想いを伝えはしたものの、その後の展開が何も描かれていない。

(おそらく『You&Me』のMV同様、
アイドルが男性と密な関係になるという表現ができないからではなかろうか。
アイドルが男性と恋仲となる表現・ 前回の続きを違うライブで行う、という趣旨があるからこそ今回のツアーに三嶋さんが反対された理由があったのではないかと思う。)

その帰結を描くのが今回のツアーの要旨であり、
接合点として『エキセントリック・ラヴァー』がある。

「LiM」におけるこの曲は、
明らかにそれまでのライブの流れを一旦切った上で披露された。

また、曲のメッセージも「本当のわたしを見つめて」と、
「想いを伝える」からは一足飛びの位置にある曲であったが、
CD発売直後ということで、 歌わない選択肢はなかったと思われる。

故に参加当時は、 このような演出でないと
披露が難しいのであろうと結論づけていた。

だが、「SsL」へ参加するようになってから
「LiM」におけるこの曲の演出の意味合いが変化した。

ライブのはじめにこの曲を配置した上では、
まるで「SsL」の主題を次回予告したかのように思える。

次回予告の意義は、次の物語の触りをエッセンスとして散りばめることで、
聴衆を次の物語へ誘うことである。

次回予告として配置されたこの曲が、

今ツアーの主題となる可能性は低くはないと推測する。

無論この「SsL」への誘いが「LiM」時点で意図されていたのかどうかは定かではない。
だが少なくとも「SsL」の構成では意図を持ってアレンジされたと考えられるだろう。

上記のように、「SsL」の触りとして、「LiM」で告知されたと解釈され得る点で、
『エキセントリック・ラヴァー』は、本ツアーの主題として認めることができよう。

 

〈2 前回ツアーFFCとの関連性〉

先に、前回ライブの「LiM」からの連続性について述べたが、
本項では、前回ツアーの「FFC」との関連性を述べたい。

「FFC」では、以下の特徴があった。

①一貫したストーリー性を持った映像
  →恋を知らない女の子が、恋を知るための旅をする
②映像と楽曲のリンク
  →映像での歌詞の引用、映像の内容を歌で表現

こちらを念頭に置いた上で、「SsL」を整理すると、
大凡、以下のようになろう。

①恋をする禁忌を破った妖精の物語
②公演ごとに変わる花言葉に合わせて披露する楽曲を変える、
 映像の内容を歌で表現

 

上記のように、「FFC」と似たような構成となっている今回である。
SsL」の構成もこちらのツアーをモチーフとして
勘案を重ねたことは想像に難くない。

 

それでは「FFC」と今回のツアーの差異は何か。
ベタな二項対立論に立脚すれば、
意思を持って変化を加えた点には、大きな意味が隠されているだろう。
下記のように「FFC」とは違う趣となっている点をまとめた。

①明確なストーリーの帰結がない
  →「FFC」では映像にて帰結を表現していたが、今回は結びの映像がない
②明確なキー曲がない
  →「FFC」では映像で言及された『純愛レッスン』を主題として採用していた

 

大まかにまとめてしまえば、
「FFC」は緻密なストーリー構成・メッセージ性を前に
ただ只管に感嘆する、そのようなライブであった。

こちらを体現した主役は、
歌詞の引用や締めの映像に表された、分かりやすさだ。

分かりやすく、映像で説明をし、キー曲を配置したからこそ、
主題が理解できた。

此度、この分かりやすさから置き換えられた、
構成の意図は何であろうか。

分かりやすくない、から生まれるのは
聴衆の解釈の余地だ。
田村ゆかりさんは、複数のメディアで度々
「解釈は受け手がするものであって、作り手が押し付けるものではない」との

発言をされている。

また、以前に「ファンの中では、自分の発言が最上位とされてしまい、
個々人の考えや感覚というものが、潰されてしまう。個々の楽しみ方があっても良い」との発言もされていた。
(本来であれば、引用元を示すべきだが、失念したのでご容赦下さい)

この発言を背景として考えるのであれば、
今回のライブで、我々が求められているのは、
個々に解釈をすることである。
(そのように自分勝手に解釈したからこそ、このように慣れないブログを書いているわけだが・・・)

解釈すべきは、彼女が伝えたいこと(主題)であり、
先に挙げた項目で言えば、ストーリーの帰結とキー曲だ。

ストーリーの帰結とキー曲の詳細な考察に関しては、
「FFC」との関連性にフォーカスした本項目のみで論じる内容ではないため、
明確な帰結・キー曲がない、という対比で留め、後の項目で私論を展開する。

本項目では、あくまで構造のみを俯瞰した際に、
「FFC」との関連性が高い本ツアーにおいて、
前回ツアーのイントロである『純愛レッスン』同様に、
本ツアーのイントロの『エキセントリック・ラヴァー』がキー曲としての

蓋然性が高いことを述べるに留めておく。

「FFC」の構成をモチーフとして「SsL」が構成されたことは
共通項を見ると想像に難くない。
ただ、明確なメッセージを精緻な構成で分かりやすく伝えた「FFC」の
言わばアンチテーゼとして、解釈の余地を大いに持たせた「SsL」。
構成へフォーカスすれば、「FFC」のイントロ『純愛レッスン』同様に
SsL」のイントロ『エキセントリック・ラヴァー』が主題である可能性は
あながち低いとは言えないであろう。

〈3 「SsL」の映像と曲目〉

先ほどは、公演を一単位と捉え、鳥の目線で、
他の公演との関わりにフォーカスして
主題を推定してきた。

本項目からは、本公演の曲目をチャンク化し、
チャンクごとのメッセージに立脚して
SsL」の主題に迫ろうと思う。

本来であれば、全ての可能性を示唆し、
論を進めるのが考証のあるべき姿であるが
解釈の多様性を抽出するにあたり、一人では困難である点と
紙幅を言い訳にして、主題を仮置きして下記へ記載する。

 

本公演は下記の二項対立であるという点を念頭に置いて
ご覧いただくとわかりやすいと思う。

①薔薇・妖精・田村ゆかりさん
②百合・女の子・「ゆかりん

 

[チャンク1 主題]
エキセントリック・ラヴァー…「本当のわたしを見つめて」

 

[チャンク2 カメラの前で笑う(着飾った)「ゆかりん」]
Honey Moon / 惑星のランデブー
 …「君と描く未来 探そう」 / 「明日は きっと Happy Days
fancy baby doll…「何万回 生まれても 君に会いたい 約束よ」
アンドロメダまで1hour…「思い出たくさん Let’s go!!」

→「月」「惑星」「人形」「アンドロメダ」などの空想的/童話的な言葉を持って
 未来の幸福を信じる楽曲が続く。
 みんなに求められている「ゆかりん」が登場するパートである。

 

[チャンク3 恋の萌芽]
恋と夢と空時計 / パピィラブ / Spring fever
 …「だからエピローグはいらないの」
   / 「きらり光る 涙も そう すべては きみへと続く ステップだから」
  「騒ぎ出す心 今は気づかないふりをしたの」
I.N.G.…「会うたびに私 I.N.G 君を もっと好きになる」

→健気で純粋な恋を知った「ゆかりん」のパート。「FFC」の『純愛レッスン』と
 同じ内容にあたると思われる。
 妖精が女の子を好きになったことを暗示している。

 

[チャンク4 映像1]
恋に落ちる禁忌を犯した妖精が暗い闇に囚われる映像。

→「恋のエキスパート」が恋に落ちることが禁忌であるというのは、
 「ゆかりん」という「みんなのアイドル」が恋に落ちることがご法度であることの
 メタファーではなかろうか。
 
[チャンク5 叶わない恋]
雨音はモノクローム(儚い恋) / ひとひらの恋(片思いと真心の恋)
/ floral blue(悲しみと希望)
 …「好きな服を着ていても私じゃなくなっちゃった
  あなたがいない ただそれだけで」
  「あなとといつかきっと 逢えると信じて 胸に花びら」
  「枯れるよりも苦しいのは 咲き続けて生きるfloral blue」
神様Rescue me!! / 星降る夢で逢いましょう / 上弦の月(アコースティック)
 …「この愛をRescue me!!」 / 「夢で逢いましょう
  「伸ばした両手が また届かなくても ただ 真直ぐ 見つめていたい」
you(アコースティック)
 …「わがままばかりでゴメンネ きっと 好きになりすぎたみたいなんだ」
  「今日はまだそばにいていいかな」

→「みんなのアイドル」たる「ゆかりん」が、
 叶わない恋と知り、わがままとわかりつつも想いを止められずに恋に落ちてしまい、
 田村ゆかりさんになった描写。

 

[チャンク6 映像2]
闇に囚われた妖精が、それでも真心の愛を貫き、妖精の王様の恩赦を受け地上へ戻る。

→大いに解釈の分かれる部分であるが、本論では、下記選択をして解釈をした。
①部屋の中の女の子は誰か? (妖精? 女の子?)
 →妖精。映像1で落ちた妖精と映像2冒頭のピンクの粒子の落下を同一と認識する。
  また妖精としての権威を剥ぎ取られたという行為は、
  「ゆかりん」が田村ゆかりさんに戻った比喩ではないか。
②この部屋はどこか? (暗い闇の中? 女の子の部屋の中?)
 →落ちたピンクの粒子を妖精と仮定すれば、こちらは暗い闇の中となる。
③何を表現しているのか?
 →鎖…暗闇へ囚われている描写
  ベール…[チャンク7 愛したい]から[チャンク8 愛されたい]への
  切り替わりの描写
   (誰かを愛する「ゆかりん」→愛されたい田村ゆかりさん)
    ベールは感情の純潔化や素の気持ちを表していると推測する
   (後半脱いでいるため)
  お花の勉強…愛を知り、愛を深めている
      
[チャンク7 愛したい]
Traveling with a sheep
…「隠した宝の地図はどこにもない Another heaven??」
 「手の中で光る素晴らしい羽で飛びたい」
砂落ちる水の宮殿…「一目逢いたい 何がいけないの?」
神聖炉 …「投げかけた千の謎 答えが浮かぶまで 思い出を信じて私は甦る」
     「どうしても貴方から神聖な炎だけ受け取りたいの」

 

[チャンク8 愛されたい]
恋のアゲハ…「誰かを見つめちゃイヤなの 私だけを見てて」
Passion Error…「大好きでも台無しになるの」「愛されたい たったそれだけで」
Luv Fanatic…「誰も知らない時間はあなたに取ってある」「ペルソナFanatic」

→「チャンク7」と「チャンク8」で衣装が白から黒へ変化したり、
 幻想的な演出で心のなかを表現していたのが、
 肉感的に体の動きで魅せるように変化するのも面白い。
 ダンサーの赤と白の衣装は、単に薔薇と百合の対比だけではなく、
 恋をしてしまった田村ゆかりさんと無垢な「ゆかりん」の対比でもあるだろう。
 (あと2つの色を混ぜるとピンクになるというのも、彼女らしくて良い)

 

[チャンク9 田村ゆかりさんの部分を皆に見せた上で演じられた「ゆかりん」]
I DO 愛…「わがままな君がいい」

→youの「わがままばかりでゴメンネ きっと 好きになりすぎたみたいなんだ」に対して
 「わがままな君がいい」と返すアンサーソングになっている。
 「チャンク7」と「チャンク8」を見た上でそれでも「わがままな君がいい」のだ。

Fortune of Love…「約束しようね」
W:Wonder tale…「奇跡より約束が好き」「違う星は見ちゃだめ ここにいて」
You & Me / LOVE ME NOW! / チェルシーガール
 …「出会って「ふたり」になる」 / 「つなぐ手をはなさないで」 / 「大好きだよ。」
もうちょっとFall in Love…「止まらない 止まれない 恋するキモチ」
Pleasure treasure…「ほんとうの未来がそばにあること」

→「チャンク2」と似たような幸福な未来志向の歌詞が多いが、
 幻想的/童話的な歌詞は少なく、幾分現実志向の歌詞となっている印象を受ける。
 恩赦を受けた上で再度の告白、という意味合いも含まれているだろうか。
 田村ゆかりさんの面を知っている相手へ見せる「ゆかりん」の描写と解釈しておきたい。

 

[チャンク10 「本当のわたしを見つめて」くれるの?]
雨のパンセ…「好きになった ただそれだけ あなたの気持ちの意味もわからないまま」
      「どうして二人はめぐり逢った」

→雨のパンセは、思わせぶりな態度を取る相手へ「気持ちを教えて」と迫る曲だ。
 田村ゆかりさん(本当のわたし)を見て、その上で演じる「ゆかりん」を見て、
 「どうして二人はめぐり逢った」と問われている。
 退出するときの後ろ髪を引かれた歩き方は、答えを聞きたいけど、
 もし自分の想いにそぐわないものであったらどうしよう、でも聞きたい、という心中を表しているのではないか。

[チャンク11 君たちは、問いに答えているか?]
アンコール

→雨のパンセの問いへの答えを出せるのは、「もっとあなたを見ていたい」という真心のアンコールだと思う。
 「二人がめぐり逢った」意味をプラスへ転じるのは私たち参加者の声だ。
 ゆかりさんに分かるように、態度で示したい。

[チャンク12 田村ゆかりさんからの答え]
好きだって言えなくて…「私を 見つけて もっと もっと 逢いたいな」
Gratitude…「誰よりも見つめててくれる」
あのね Love me Do…「あのね 君を 見つめています」「君を好きでいたいんだ」

ダブルアンコール
心の扉…「あなただけにわかるなら いつかはその胸に この声が届くように」

→私たちの「本当のあなたが見たい」という声へのアンサーとして、
 こうやって田村ゆかりさんが答えを返してくれることで
 ようやく私たちは両想いになれる。(※勿論比喩であるが、物語の帰結はここだと推察する)

以上の曲目の考察から、『エキセントリック・ラヴァー』が本ツアーにおける主題だと考える。
彼女の「本当のわたしを見つめて」、両想いになろう。(?)

〈締め〉

イントロで表現した「LiM」からの連続性、一曲目が主題であるという「FFC」との関連性、
そして本曲をベースにした「SsL」の映像と曲目の私的解釈により、
今回のライブテーマは、「本当のわたしを見つめて」であると結論します。
(『エキセントリック・ラヴァー』より引用)

〈最後に〉

みんな! しっかりアンコールして雨のパンセの問いに答えような!
代々木公演では本気で愛を伝えましょう。